絶望の人生を歩む少女に「救い」はあるのか――『辛辣人生~それでも私は生きている~』

レビュー

本日まんが王国コミックスよりもろおか紀美子先生の『辛辣人生 それでも私は生きている』の合冊版が配信されました。

もろおか紀美子先生といえば「色欲」「魔性の女」などを描くレディコミ作家といったイメージがありますが、こちらのタイトルはこれまでのもろおか紀美子先生の作風とは大きく変わったとても重いお話となっております。

辛辣人生~それでも私は生きている~
©もろおか紀美子/ビーグリー

待望の女の子は醜いあひるの子だった

主人公はブサイクな女の子。

母親がどうしても女の子が欲しかったと言い周囲の反対を押し切って産んだ子ですが、
その子は「醜いあひるの子」だった――。
名前は皮肉にも「美しく咲く」という思いが込められた「美咲」。

兄の「勇樹」は似ても似つかないイケメンで、近くに住む従兄妹もイケメンのお兄さん「舜」と同い年で美少女の「優香」。

そんな周りでは自分だけがブサイクという状況では美咲が自分を必要以上に卑下してしまうのも仕方がないことかもしれません。

「虐待」「暴力」そして「いじめ」

容姿で劣等感を抱く美咲ですが、かわいそうなのはそれだけではありません。

家では父親からの「虐待」「暴力」。

学校では皆からの「いじめ」と…。

なるほどこれが『辛辣人生』
あまりに辛い……。

見ていてひたすらかわいそうだと思いますが、美咲には少しだけイライラさせられる部分もあります。

何故イライラするのか、それは美咲の「いじめられっ子」としての描写が非常に上手いからです。その場にいたら思わず加わってしまうかも…読者にそう思わせてしまうようなキャラクターとして描かれています。

もろおか紀美子先生、実は最初からこういった作風だったのでは?
と思ってしまうほどそれぞれの描写が上手く、美咲をあらゆる手段でどん底へ落とす。その手段の豊富さにも驚かされます。

そんな美咲にも作中でいくつか「救い」があります。
ですが、その「救い」もことごとく美咲を傷つける「負」の要素に変わっていきます。
是非皆さんに読んで確かめていただきたいので、ここでは細かい内容には触れません。

まとめ

この手のいじめられる作品では「復讐」など反撃のターンがあって読者をすっきりさせてくれることが多いのですが、今の所そういった流れを感じさせる描写すらありません。
どういった展開でお話が進んでいくのか…。

冒頭のシーンでいきなり不穏な場面から入っている本作ですが、
美咲に本当の意味で「救い」が訪れる日は来るのでしょうか。
今後の展開からも目が離せません。

辛辣人生~それでも私は生きている~/もろおか紀美子 ビーグリー