S男共よ、マゾ男の魅力で塵となれ。女王とマゾのSM夫婦エッセイ『亭主元気でマゾがいい!』

レビュー

「お前、オレのこと好きなんだろ?」
「まぁ、お前はオレのものだからな」
「オレにそんな口きいていいと思ってんの?(壁ドン)」

なんて、ちょっぴりSな彼に迫られたらドキドキしちゃいます?

わたしは埋めたくなります。

少女漫画で主人公の女の子をトゥクントゥクンさせる男って、比較的Sっぽいヤツが多いですよね。壁ドンや顎クイが流行るのも「男性からのちょっと強引なアプローチ」にときめき需要がある証拠です。

が、Sにときめく性癖を持たずして育った女にとって、S男はただのコミュ障です。
キスさせろ? は?

Sなアイツにドキドキ♡きゅんきゅん♡ みたいな漫画を勧める意欲がゼロなので、今回はM男のススメに代えて、漫画『亭主元気でマゾがいい! 』をご紹介します。

亭主元気でマゾがいい!
©六反りょう/講談社

本作は、漫画家の「りょう」さんと旦那の「マゾ夫」の出会いや生活をコミカルに描いたエッセイであり、女王による「結婚相手としてのマゾ男布教」でもあります。

りょうさんの亭主・マゾ夫は「攻めより受け、女性からグイグイきてほしい」というMっぽい草食男子ではなく、積極的に女王へ迫ってムチで叩かれ縄で縛られ首輪で繋がれたいガチのマゾヒスト。

受け身な男性が増えているといわれる昨今ですが、真性マゾとなると逆に見つけるのが難しそうですよね。東京で糸を垂らせば、マゾ男よりなんちゃってS男のほうが大量に釣れそうです。

では、りょうさんは一体どうやって運命の真性マゾと出会ったのか。

はい、答えは「SMバー」ですね。

「マンガで食えないからSMバーで女王様をしていた」の破壊力がすごい。

漫画家としてはなかなか芽が出なかったりょうさんも、SMバーでは人気の女王様。
踏まれ叩かれ虐げられたM男たちの満たされた笑顔を見て、「女王様やっててよかったな」とやりがいを感じる日々を過ごしていたそうです。

そしてある日、友人と3人でこのお店にやってきたM男が、のちのマゾ夫でした。

初見からマゾ性がにじみ出ていたマゾ夫。
すかさず女王のターゲットになり、縄をかけられながら大興奮です。
この姿を見て「かわいい♡」「いじめてあげたい♡」なんてトゥクントゥクンしちゃう方は、マゾ男とのパートナー適性があるかもしれません。

さて、前述の通り、本作は「結婚相手としてのマゾ男布教」が1つの目的です。

では、結婚生活における真性マゾ男の良さとは一体どんなものでしょうか。

例えばこちら。マゾ夫のカーディガンをタオルと間違えて、りょうさんが手をふいてしまったエピソードです。

さすがのマゾ夫も怒るときは怒ります。
本件の落ち度はりょうさんにあり、さすがに申し訳なさそうなご様子。
まずはりょうさんがきちんと謝ることが、通常の仲直り方法だと思いますよね。

でも、そこはやっぱり女王様。

支配者の開き直り。

とはいえ、なかなかご立腹だったマゾ夫。
いくら女王相手と言えど、そう簡単に怒りを収められるとは……

収まった。なんて平和な家庭なんだ。好きだマゾ夫。

他にも「マゾかわいいな、いいな愛せる」と思えるエピソードが盛り沢山。
また、男性が見せるマゾな一面に「……トゥクン///(!!)」としてしまう己の新たな性癖にも気付けるかもしれません。

本作で「女王と真性マゾの結婚生活」という希少な日常を楽しみながら、よければパートナーの選択肢に「マゾ男」を追加してみてください。

最後に、わたしが一番好きなシーンをお届けします。

ある出来事に、本気でへそを曲げてしまったマゾ夫。今回はさすがにりょうさんも謝りますが、腹の虫がおさまらないマゾ夫は「おしおきが必要だな」と彼女に迫ります。

この状況にこのセリフ、少女漫画でS男がやりがちなやつ。「こんなマゾ夫はイヤだ!!」とヒヤヒヤさせられたと思ったら。

はいごちそうさまでした。
踏むから結婚してくれ。

亭主元気でマゾがいい!/六反りょう 講談社