きっと誰しもが期待したあの瞬間。新感覚体験談漫画『やれたかも委員会』

レビュー

「やれたかもしれない」。
きっと、誰にでも人生においてそう思った瞬間があるのではないだろうか。

「彼女と一緒に電車に乗っていれば」。
「あの一言を投げかけていれば」。
「あのメールを送らなければ」。

もちろんあらゆる選択の末、今の自分がいるわけだが、そうはいってもちょっとした後悔を感じてしまう。
「……もしかしたらあの日やれたかもしれない」。

あの日、あの時のほろ苦い経験を思い出させてくれるのが『やれたかも委員会』だ。

やれたかも委員会
©吉田貴司/佐藤漫画製作所

『やれたかも委員会』は、実話をもとに「やれたかもしれない」夜を描いたオムニバスストーリー。4月からは地上波・ネット配信などで、俳優・佐藤二朗さんや乃木坂46の白石麻衣さんを迎えてのドラマ放送も始まっている。

あの日、果たして俺は「やれた」のだろうか。

「もしかしたらあの時やれたかも……!?」。
そんなほろ苦い過去の思い出を引っさげてやってくる人々の経験談を聞き、「やれたかも委員会」の3名があの夜の出来事を判定していく。

情景描写の細かさと「自分にもあったかもしれない」と思わせる生々しいシーンが本作見どころだ。

例えば、こちらは1巻に登場する「同じバイトの女性の家に招かれた」一幕である。
女性経験のない増田くんが、初めて女性の部屋に足を踏み入れてから「やれたかもしれないあの瞬間」までが描かれている。

同席していた女性の同級生はコンビニへ。
2人きりになったところで、女性はおもむろにベッドに横たわる。
わかる。あるあるこういうシーン。

ここで増田くんの脳内で、たられば論争が始まる。
15年も前のあの夜、行動に移せなかった自分を悔やんでいる増田くん。

あの時の選択を誤っていなければ、勇気を出してもう一歩踏み込んでいれば、やれていたのだろうか?
ターゲットとの関係性、会話の内容、行動などなど、あらゆる要素を加味して委員会メンバーの判定がくだる。

鋭い観察眼と考察は、今後の参考に

「体験談を聞く → 判定する」。
基本的に本作はこの流れでテンポよく読み進めていける。
そして体験談への共感度と共に注目したいのが、委員会メンバーである月 満子(ミチコ女史)の考察だ。

どの体験談を聞いても「やれたとは言えない」札をあげつづけるミチコ女史。

決して感情に流されず、鋭い考察を述べる。

鋭い。
テレビドラマでは白石麻衣さんがこのミチコ女史を演じている。どう演じているのか、原作とテレビドラマを見比べてみるものいいだろう。

ワンナイトラブから本命にのし上がりたい人よ、本質的な回答を求めたいなら、友達に相談するよりも本作を読みこむ方が今後の参考になるだろう。

果たしてミチコ女史が「やれたかも」札をあげるパーフェクト体験談はあるのだろうか……!?
その辺りも楽しみにしながら読み進めていただきたい。

やれたかも委員会/吉田貴司 佐藤漫画製作所