魔王は強いとは限らない。へっぽこ貧弱魔王漫画特集

まとめ

かつて魔王キャラは、畏怖すべき存在だった。
なのに、現在漫画に登場する魔王は、へっぽこ揃いだ。
そりゃまあね、物語の都合で勇者がいる限り魔王は絶対勝てないからね!

負けるの前提な魔王たちが、悲しくも愛らしい漫画をご紹介します。
 

魔王城でおやすみ

魔王城でおやすみ
©熊之股鍵次/小学館
 
魔王がさらってきたスヤリス姫。彼女は寝る以外することがないからと、「最高の睡眠」を追求しはじめます。
 
キモが座り過ぎなスヤリス姫は、さっくり牢獄を(自力で)出ては、枕、布団など快眠グッズを求めて城をウロウロするように。ときには魔王城の部下を殺して材料にして安眠グッズを作る、サイコパスと化します。とっとと帰ればいいのに、目的が逆転して「睡眠」目的で城に居座ってしまう。
 
スヤリス姫は「人質」、つまり腹が立ったからといって魔王側は彼女を殺すわけにはいかない。彼女がうろちょろして事故死しても、毎回蘇生させなければいけない。
 
姫様に振り回されて、魔王は無力感に打ちひしがれるしかない。姫様は別に魔王が嫌いなわけではない。寝ることしか考えてないから、魔王が眼中にないだけです。
耐えるのも、魔王の仕事のようです。
 

魔王の秘書

魔王の秘書
©鴨鍋かもつ/アース・スターエンターテイメント(ジャム・ティービー)
 
魔王は考えました。人間を捉えて知能を捧げさせれば、世界征服は捗ると。魔王は人間の女性秘書を誘拐、彼女を恐怖に怯えさせながら征服活動に励むつもりでした。
ところが彼女ときたら「命が惜しいので腹をくくった」と、驚きもせずやたら冷静。超絶合理的に人間を根絶やしにする方法をガンガン提出。3日で世界征服完了のプランを立てます。
 
待った、待った、病原菌を使うとか、最初に蘇生手段を断つとか、それは非人道的すぎるのでは。いや魔王だからそれくらいしてもいいんだけど、それはちょっとはばかられるよ!?
組織化を着々とこなす秘書。魔物の仕事環境が整えば整うほど、魔王の存在の必要性が激減していく。
 
魔王は悪魔じゃない。邪悪とも限らない。あえて言えば「魔物を引き連れた人間への対抗勢力」という「役割」です。
冷酷な彼女に接することで、人間の凶悪さを知る魔王。自分の存在意義を悩み始めてしまいます。魔王って案外、貧乏くじかもしれない。
 

魔王様ちょっとそれとって!!

魔王様ちょっとそれとって!!
©春野友矢/集英社
 
魔王様は「魔」が付くだけあって、魔法が使えると超絶強い。けれども封印されちゃうと、人間レベルに弱くなる。
 
かつて恐れられていた魔王の少女と、彼女を倒しに来たはずの魔法使いが、閉鎖空間である「檻」に閉じ込められてしまったからさあ大変。凡人化しているから、殺し合いなんてできない。できるのは喧嘩くらい。
 
かくして、一時休戦の同居生活がはじまります。その後勇者も来たものの、一緒に閉じ込められてのんびり過ごすハメに。
 
力が使えないとなると、魔王も所詮ただの女の子。すっかりいじられ対象になってしまいます。プライドが高くてすぐムキになってしまう、小動物みたいな魔王がなんともかわいらしい。この作品のキャッチコピーは「魔王様の無駄遣いコミック」なのですが、まさに魔王感ゼロ。もっとも彼女に力が返ってきたとしても、たいして強くなさそうな、根の部分のへっぽこぶりが魅力です。
 

魔王遭難中!!! ~愉快な仲間達を添えて~

魔王遭難中!!! ~愉快な仲間達を添えて~
©Marimo Enda/講談社
 
強大な魔力を誇っていた魔王。天使との戦いの末、魔力が大幅に失われてしまった。そこで人間を滅殺し魂を吸収、魔力を回復させる作戦に出た。
四天王と共に人間界に向かった魔王。ところが彼らが降りたのは、無人島。しかも人間界は魔法が使えないから、吸収もへったくれもない。詰んだ!
 
人間が全然出てこない、無力な魔王御一行様遭難コメディ。全員の無力ぶりもさることながら、特に四天王を従える必要性がない魔王の手持ち無沙汰感が泣ける。配下は慕ってくれているけど、そもそもスローライフすぎてすることない。魔王って常に魔王という立場であろうとしているから、案外社畜気質だったりする。
途中から自分も遭難者であることを認めて、部下と平等な仲間であろうとするシーンは、滑稽ながらもちょっと泣けます。
 
ヤクザが子供に優しいとか、不良がネコ好きとかとベクトルは同じで、いかつい魔王が弱いのはとてもかわいらしく見えます。ファンタジーRPGに出てくる魔王はごついからこそ、へっぽこ感が少しでもあると一気にキュートになる。
 
昨今は女の子魔王キャラが急増中。『魔王様ちょっとそれとって!!』を見るとわかりますが、少女魔王は「プライドが高い」「お嬢さま風」「なのに抜けている」とあらゆる属性をがっつりカバーしてくれる。幼い彼女らに伏して仕える魔物たち、という構図もときめいちゃう。泣きっ面になる強気少女魔王とか、いじめたくもなるってものです。
 
たまには洒落にならないくらい怖い魔王も見てみたい。けれども「愛嬌のある悪役」は、潜在的に多くの人が求めているのかもしれません。